部屋の扉が開き、足音の人物が入って来たと同時に僕は影月を抜き放ち、相手の首筋に押し付けた。
奈々
「っ…………!?」
達也
「えっ?井隅さん?」
裕也
「奈々…………?」
そこには、白いパーカーを羽織った女性が立っていた。
空港まで僕たちを迎えに来てくれた井隅奈々さんだ。
奈々
「え、えーっと……とりあえずその物騒なものをしまってくれないかな?」
そう奈々さんに言われ、僕と裕也は影月とシルバーダガーをしまった。
裕也
「どういうつもりだ……奈々。
なんで俺達を眠らした?」
奈々
「ごめんね、上からの命令だったのよ」
柚姫
「上って…元老衆が……?」
柚姫がそう言うと難しい顔をしていた。
元老衆……名家である五つの当主によって構成されている。
もちろん我ら師匠の彩音もその一人である。
柚姫
「なんで、そんな事を………」
奈々
「それが私もわからないだよね……」
なんともおかしな話だ。
奈々は、五大名家の長、井隅源一(いすみ げんいち)の孫娘なのになんで情報が伝わっていないんだ?
裕也は、そんな事を考えながら奈々たちを見ていた。
奈々
「とりあえず、みんながいるエントランスまで行こっか」
達也
「はい、分かりました」
そう言う奈々さんに僕たちはついて行こうとした時だった。
「キャーーーーーーー!!!」
部屋を出た瞬間、その悲鳴はペンション中に響き渡った。
柚姫
「な、なに!?」
裕也
「どこからだ!!」
奈々
「……中庭からよ!!」
そう言うと僕たちは、中庭へと急いだ。
中庭は、ペンションの中央に位置する場所で真ん中には桜の木が植えられていた。
中庭に着くとさっきの悲鳴を聞いたのだろう、六人の男女が桜の木の前に集まっていた。
その中の女性は、泣きじゃくっていた。
多分、彼女が悲鳴を上げたのだろう。
奈々
「何があったの!!」
???
「あっ!井隅さん!!
佐、佐賀さんが……………!」
奈々さんは六人の中の一人に問い掛けるとその人は桜の木の方を指差した。
そしてそこには、この合宿を絶望の底に落とすような光景が広がっていた。