「イャー酷い雨だ!バスだ!乗って帰ろう」
夜のジョギングが日課の茂は、不意の雨にタイミングよく現れたバスに乗り込んだ。
「助かった!」と思いながらバスのなかを見渡した。
「なんだかミョーな雰囲気だな!」
『次はドロヌマ、ドロヌマです』車内アナウンスが流れた。
七、八人の客はバスの揺れ以外の動作がない。
「ドロヌマなんて、あったかな?バスに乗ったのなんて初めてだしな」
『次はフカミ、フカミです』
一人が乗り込んで来た。躊躇なくと言うより指定席かのように席に座った。
「どんな地名なんだ?なんで皆下向いてるんだ?気味が悪い!次で降りよう」そう決めた瞬間アナウンスが流れた。
『スコシグライ発ドロヌマ経由、トビコミ岬行き集団自殺バスをご利用いただきありがとうございました。間もなくトビコミ岬でございます。』
「何なんだこれ!」茂が叫んだその瞬間、体が宙に浮き、前後左右上下の全てが常識を否定した。 次の恐怖は強い衝撃に少し遅れて海水と共にやってきた。
意識が遠くなる中で茂は聞いた「死に神様!一人部外者がいました!」「運転手(しもべ)よ、茂か?奴は奥さんの強過ぎる希望だ!」