D‐GON ?

shin.ne  2009-12-20投稿
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町の釣り人は今日も魚が掛からない。


ただ、流れていく雲

翼を広げ自由に飛ぶカモメたち。


そんな変わらない景色の中で、非日常を目にした。


「なぁ。俺にはさっきから、どうにも」

仲の良い隣の釣り人にそれを話した。

「人が歩いているように見えるんだが」

「んー。人かなぁ。クジラが顔を出してるんじゃないか」

どうやら隣の釣り人も、その非日常を気にしていたらしい。

「クジラは顔を出さないよ。あるとすれば」

「あるとすれば、なんだ」

「うちの嫁が、ゴミを出せって言いに来たのさ。今日のうちにな」

「はは、それならまだ良い方だな。」


カモメたちのダンスが終わった頃になると、
その非日常は釣り人の前に立っていた。


「なぁ。俺には、どうにも少年にしか見えない」

「ああ。おい、君はそこで何をしている」


人が海の上に立つ
そんな非日常を目の前に、防波堤の上から当たり前の質問を投げた。

その質問に少年はこう答えた。

「僕の体はどこにある」


釣り人がお互いの顔を見合わせた直後、
町全体に響き渡るほどの地鳴りが鳴った。

打ち上げ花火のようなその音は、まるで何かの合図のように。



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