お昼休みに、近くの洋食屋で、一服しようとした哲彦は、相田を誘った。
「先輩すんません。かみさんに経費節減てことで、最近弁当なんすよ」
「へぇ…結婚すると変わるんだな。俺は、しても変わらないと思うけどね…」
相田は、激しく首を振った。
「甘いですよ。俺の友達も、先輩みたいなこと言ってましたけど、結婚して2日で、外食禁止にされましたもん。小遣いも、制限されたって…よく、そうゆう話を聞くと、『俺は、亭主関白で…』なんて言う人程、奥さんに抑えこまれるってパターンじゃないですか?その通りでしたね(笑)」
「ふぅん…」
関心している哲彦と 相田は、さっきから、それとなく視線を感じていたが、なかなか、そこから動かないので、しびれを切らしてそちらに視線を向けた。
相田は、哲彦に耳打ちした。
「先輩、彼女ですよ。さっき言ってた…」
「さっき?」
「ほら、先輩を訪ねてきた…」
「ああ…」
哲彦は、先ほどの相田の言っていたことを忘れていた。
何度も見ている顔だが、それ程気になっていなかっただけに、いざ自分のことを気にしていると、聞かされて、意識せざるを得なかった。
「多分、先輩に用があると思いますよ。言ってきましょうか?」
「そうかあ?まあ、俺も飯食いに行かないといけないから、このままってわけにはいかないから、お前は、飯食ってなよ」
「そうですか?じゃあ、そうさせてもらいます。でも、彼女、ここから見ても思いますけど、綺麗な人ですよね?」
「確かにな…」
だが、哲彦のなかでは、ただ綺麗な人がいいかとゆうと、そうではなかった。 義人の受け売りではないが、話しやすければ、あまり容姿にこだわる方ではない。
ある意味、理想が高いためか、良縁に恵まれない。
長年連れ添った彼女とも別れてしまった。
(そろそろ、こだわりを、捨ててみるか…)
哲彦は、多少の葛藤を抱きながら、席を立った。
案の定、彼女は声をかけてきた。
「あの…」
「はい?」
「石川さんですよね?」
「あの…。時間ありましたら、よろしければ、お昼、ご一緒しませんか?」
彼女は、明らかに、勇気を振り絞った顔をしていた。