千鶴子は、一度目の結婚までは、上の二人の姉のように、贅沢な暮らしをして、大変な資産家に嫁いで、その夢見がちな性格のまま、成人となった。
ところが、嫁ぎ先は、資産家であると同時に、ビジネスには、果敢に取り組む性質上、当時の風潮に習って、顔も見ないで、旧家から嫁をもらったが、三日も経たない内に、千鶴子では、大事な跡取りの嫁はつとまらないと見抜いた。
千鶴子の父親に、その旨を伝え、着飾らせて山のような土産を持たせて戦時中の疎開先の家に返した。
千鶴子に実状が告げられはのは、その、今まで経験したこともない、田畑の中の、女中一人いない田舎での生活がスタートして間もなくのことであった。
自分の落ち度というものに気づかない千鶴子が、嘆き悲しんだ様は、さすがに哀れであった。