世界でひとつだけの物語。?

麻呂  2009-12-23投稿
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イブの日の朝――


それは、目覚めとほぼ同時だった。


ベッドの中の私が気付いた事。


何でこんなに天井が近いんだろう。


え!?見える!?


もしかして本当に見えてる!?


思わずベッドから飛び起き、部屋の中を見回した。


見える。見えてる。

間違いなく私の目は見えている。


夢が現実になった――


こんな事って本当にあるの!?


数日前の夢の内容を思い出した。


“君の願い事を叶えてあげよう”


神さまって本当にいたんだ。


鏡に自分の姿を写してみようと思ったけれど、


私の部屋に鏡は置いていない。


いつもは、杖をついての階段の上り下りさえも、


走って駆け下りた。

勢いよく階段を駆け下りる私の姿を見て、


驚いた母は言った。

『桃子‥か、階段は‥ゆ‥ゆっくり下りなさい‥‥。』


母の声は震えていた。


迷わずに向かった先は洗面所。


洗面台の前の鏡に写し出された自分を見た。


『私‥‥これが私‥‥‥‥。』


そこには、


私が想像していた私とは全く別の私がいた。


自分が他人に、どう見られているのかを、いつも気にしていた私。



『私って、こんなに綺麗だったんだ。』


初めて知った本当の自分の姿。


嬉しかったせいか、涙がこぼれた。



『桃子は、お母さんの子だもの。

綺麗で当然よ。』



『お母さん‥‥。』


『いいの。何も言わないで。

これは、きっと神さまが桃子にくれたプレゼント。

今日は彼とデートでしょ!?

早く支度しないと遅刻しちゃうわよ。』


胸がいっぱいで、言葉が出て来ない。


母は何故、こんなに落ち着いているのだろう。


まるで、神さまが私の願いを叶えてくれた事を、


母は知っていたかの様だった。


私は、生まれて初めてメイクをした。


妹からメイク道具一式を借り、


生まれて初めてルージュを引いた。


鏡の中の私は、


今日の着こなしのお手本にした、


雑誌の中のモデルさん達に負けないほど、綺麗だった。


今日の私を見て、彼は何て言うだろう。

目が見える事を知ったら、きっとびっくりするだろうな。


胸がはずんだ。


これから、彼と会うんだ。


彼と会える。


家を出た私は、心の中でつぶやいた。



神さま、ありがとう――



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