ドラマでもこのような言い訳を使うシーンがあるが視聴者は必ず「そんな言い訳、無意味だろ」と思うだろう。僕も実際そう思う。しかし、実際にこのような立場になると少しの希望でもあるなら、それに賭けてみたくなる。
『本心でないことは言っていいの?』
やはり言い訳は言わない方がいいな、としみじみ思った。
『ごめん』
『ごめんで済むなら警察はいらない』
これは冗談で言っているのか、と思った。それと、警察が必要なほど重大なことをしてしまったのか、と罪悪感が僕を襲う。
『…だけど、謝ることが人としての礼儀だと思うから』
自分で何を言っているのかわからなくなった。
しばらく沈黙が続いた。
『大切なものを馬鹿にされると腹が立つの』奈々さんが沈黙を破る。
僕が深い意味で言ったわけではない言葉が、奈々さんにとってはナイフのように鋭かったのだろう。言葉は姿を変えることがわかった。
『もしかして…弟からのプレゼント?』
僕は推測を口にする。
『そう』
『本当にごめん…』
しばらく、また沈黙が続いた。この沈黙が永遠に続きそうな気がしたその時…
『こんな時間に何してるのかな〜』
沈黙が破られた。