「荷物は積んだ。後は頼んだぞ、ヨーク。サーカスの奴らも町にいるが、子供が数人残って留守番をしている。あいつらが何か仕出かさないように見とけ!いいな!」
「わ…わかりました」
僕は、タナーおじさんにイーディン・ローとの事がばれていない事にほっとしていた。
「それじゃあ行ってくる」
タナーおじさんが馬車に乗って、見えなくなるまで見送ると、僕は渋々仕事に戻った。
僕が仕事をしているのを、イーディン・ロー以外のサーカスの子供達が眺めていたが、気にかけないようにした。イーディン・ローとの事もあり、気まずさを感じるからだ。
「イーディ。何処行くの?」
セリカが、テントを出ようとするイーディン・ローを呼び止めた。
「また…またあの子の所?昨日からずっと…どうしたの?」
不安げに尋ねるセリカに、イーディン・ローは悲しそうな表情になった。
「僕は…あの子を怒らせたんだ。あの時は逃げたけど、やっぱり…謝らなくちゃ…いけないんだ」
イーディン・ローがそう言うと、セリカは手元にあった積木を投げ付けた。その積木は、イーディン・ローの胸に当たってから、地面に落ちた。
「あの子が怒ったから謝る?何よ…そんな理由が無くたって、会いに行くクセに…」
セリカの目は、少しばかり潤んでいた。けれど、その表情は激しく憤っていた。
「あの子は…あの子は孤児なんだよ?タナーさんとは、似てもないし、親子じゃない!接し方が…まるで他人を使うみたいだもん!
孤児は意地汚いんだよ?自分勝手なんだよ?怒ったのだって、あの子の心が狭い…」
「それでも、僕が悪いんだ。あの子が孤児でも僕が悪いんだから、謝るのは当然だ」
イーディン・ローはそう言って、テントを出ていった。