「いつの間に…。」
「放課後、オレ達が河原に集まった帰りにやられたんだって…」
香山先生は、幸輔にそっと告げた。
「何で…言わなかったお前。」
「……先生…それは……。」
幸輔は苦しそうに話している。それを見るに見兼ねた先生は、
「幸輔はきっと…優太のカタキをとりたかったんだよな。」
幸輔は2度頷いた。
「…分かった。」
先生はそっと、幸輔の頭を撫でた。
「えらい…えらいぞお前。」
「でも、先生…この呪印、もう1つ恐ろしい事が…。」
「…何だ?」
「いじわる先生に近づくたびに、痛みは大きくなっていく。」
「…何だ…それは…。」
香山先生の一言一言に覇気がない。
「最悪…死ぬことも有り得るかも。」
「そんな…優太本当か?」「もちろん。今まで一緒にいたんですから。」
香山先生は、幸輔を強く抱きしめた。
自分の無力さによる怒りと
生徒を救えない悲しさ。
「だけど、幸輔は行くって言ってます。」
「…。」
「僕の体が痛み続けても、必ずいじわる先生の下に辿り着くって…。」
まだ…中学生なのに…
香山は、更に強く抱きしめた。
「守ってやれなくて…ごめん…。」
幸輔は首を横に振った。
「一緒に…来るか?」
「…はい。」
その声だけは、力強かった。
「分かった。…じゃあ優太。行くぞ。」
これが…3人の挑戦。
本当の意味の、生徒と、先生の挑戦だったのかも。
「この先にエレベーターがある。80階行きだ。」
「じゃあ…行ける。」
ついに来た。