人々は何故、いるもしないサンタクロースを信じ、七面鳥を食べ、クリスマスケーキを買うのだろう。とても不可解な事でもあると彼女は感じた。
ビルの屋上は冬の冷たい風が吹いていた。彼女はビルの屋上から下の景色を眺めた。確かに死ぬのは怖いけど、この締め付けられる憂鬱感はもっと悲惨なものだった。
その時、リンリンと音が聞こえた。サンセット色に染まる空を見ると赤い服を着たトナカイのソリに乗った人が飛んでいた。
自分の目はふしあなか。サンタクロースなんている訳が無い。それはただの作り話しで伝説だ。しかし、今自分の目に映ってるのは間違いなくサンタクロースである。それも空をソリに乗って悠々と飛んでいる。
その赤い服を着たサンタクロースと思われる人は段々こっちへ近づいてきた。明らかにこのビルの屋上を目掛けて飛んでいる。彼女は唖然となりサンタクロースを見ていた。
それは刻一刻とこっちへ来る。しかし、サンタクロースと思われるその人物は白髭のおじいさんではなくブロンドヘアーの若い女の子だった。サンタクロースでは無い、一体何者?そしてその白人の女の人はソリから降り、典子の方へやって来た。