大都会、スクランブル交差点のど真ん中。
僕は電話ボックスの中で絶叫していた。
喉がはちぎれるぐらいに絶叫していた。
でも、誰も気付かない。見えてもいないのかもしれない。あるいは、見ないふりをしているのかもしれない。
僕は、息を切らしながら、涙をこらえながら、その場にうずくまった。
悲しかった。苦しかった。切なかった。
でも、もともとここに来たのは自分の足でだった。
その時、電話がかかってきた。10回ほど鳴ったあと、疲れきった体を無気力に起して受話器をとった。誰だか分からない。でも、よく聞き覚えのある声だった。
「まだ、そこにいたのか(笑)。いい加減に出て来いよ。こっちも悪くはないぜ。何より可能性に満ちている(笑)」
「そう…。」僕は言う。
「まあ、気がすんだら出て来いよ。いつでも待ってるからよ」
「わかった。」
「それじゃ、またな」
「ん、また。」
受話器を元に戻して、一息ついたあと、僕は扉を開いた。