千鶴子と房子は、気持ちの優しい結衣子等の父親が、ストレス〜来た胃の病でなくなったことを知っていた。
結衣子がストレスに弱い体質だということもわかっていた。
モノをかすめても少々不機嫌な表情を見せるだけで(二人には、それさえ快感だった)、通りすがりに聞こえよがしに嫌味を言ったり、本人には自分の姿が見えていないので滑稽なだけだが、結衣子の視界で首をすくめたり、手を掲げたりと、思いつくままに嫌がらせのパフォーマンスをしてみせた。
結衣子は、またか…と思うこともあったが、次第にどうでもよくなく、その無視は、二人の好戦的な試みを次々に誘った。
結衣子は、社会問題に取り組み、その世界では少しは名が通っていたが、自分の実家にこそ、心を病んだモンスターが二人もいて、その質の劣悪さにうんざりしていた。
1日に一度くらいは、不愉快な思いをしないですむ日はないのか…と、苦笑するほど、千鶴子と房子は、顔を歪め、心を歪め、日々、暗い闇へと落ちていった。
親族は、千鶴子の父親の大切な法要も、千鶴子に告げずに、そっと結衣子を招くのだった。