唐沢あゆ。
地元の女子校に通う17歳。
どこにでもいる平凡な普通の女の子。
運動はちょっと苦手。
勉学も真ん中くらい。
取り柄といえば…ピアノが弾けることくらい。
今日は高校最後の体育祭。
嫌だなぁ。
私は運動音痴なのもあって、当たり障りのない障害物競走に出る。
「あゆーっ!がんばってー!」
友達のなっちゃんが応援席から声援を送ってくれる。
「あは…」
私は笑顔を引きつらせて応えた。
順番がまわってくる。
「よーい…」
パァン!!
勢いよく一斉に走り出した。
平均台を渡り
はしごをくぐり
ネットの下をくぐり…
ぐいっ
あれ?
髪留めがネットに引っかかって取れない!!
焦れば焦るほど、取れない!!
応援席からは笑い声が聞こえてくる。
恥ずかしい!!
「動かないで」
え?
あ 同じクラスの…桐島さん。
「取れたよ」
「あ、ありがとう!」
私は早口に例を述べると走ってゴールした。
カズと話したのは、これが初めてだった。
続く