空港のロビーで、彼と待ち合わせをしていた私は、緊張していた。
一人で外出したのは生まれて初めてだったし、
もちろん、一人で電車に乗ったのも初めてだった。
目が見えるって、こんな世界だったんだ。
ふと見渡した雑踏の中に、彼の姿を見た。
『桃子。待った!?』
嬉しくて、すぐに声が出ない。
今、私の目の前にいるのは、
まぎれもなく、私の大切な彼。
心臓の鼓動が高鳴る。
こんなクリアな視界で、初めて見る彼は、
想像していた通りの、とても素敵な男性だった。
『桃子!?目‥‥。』
『宇野崎さん。
私の目は今‥‥
しっかりと、宇野崎さんの姿を見ています‥‥。』
あなたの姿を見るのが、
どんなに夢だった事か。
これまでの凝縮された思いが、
一気に溢れ出た。
『今日は、クリスマスイブ。
今年は、どうやら僕の所にも、
サンタさんが来てくれた様だね。
美しい天使が舞い降りた。』
優しくキスされた。
あなたは強く私を抱きしめてくれた。
『いつもは僕の方から君を迎えに行くのに、
今日は空港まで来てくれてありがとう。』
『驚いた!?
お願いがあるの。
今日一日だけ、私のわがままを聞いて欲しいの。
私、宇野崎さんと行きたい所がたくさんあるんだ。』
『‥‥いいよ。
桃子の言う事、
何でも叶えてあげる。』
空港を出ると真っ白な世界。
『今年もホワイトクリスマスだ。
ね、桃子。』
『うん。』
ふわふわと舞い降りてくる雪が、
私達の間を、
ふわふわとすり抜けて行く。
つないだ手の温もりが、
私の中に伝わってくる。
あなたと、ずっとこうしていたいだけ‥‥
ずっとずっといたいだけ‥‥‥