世界でひとつだけの物語。?

麻呂  2009-12-29投稿
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その日、

彼は、私のわがままをたくさん聞いてくれた。


目が見えないからという理由で、外出する事を避けていた私にとって、


ボーリング場やカラオケなどの娯楽施設へ行く事さえも、


生まれて初めての事だった。


初めて投げたボーリングの球。


初めて持ったマイク。


見るもの全てが、私には新鮮だった。


その後に観た映画は、アクション物。


彼は、恋愛物が観たかったらしいけど、

私が観たい物を優先してくれた。


私が恋愛物よりも、アクション物を選んだ事は、彼には意外だったみたい。



『桃子。そろそろ食事しない!?

僕の知り合いの店なんだけど。』



『えぇ!?宇野崎さんて、こっちにも、お知り合いの方がいらっしゃったんですね!?』



『うん。これでも結構、手広くやってるからね僕。』



着いた先は、おしゃれなレストラン。


テーブルマナーなんて全く知らない私に、彼は言った。



『ハハハ。大丈夫だよ。僕が教えてあげる。

お箸も、もらってあげたから、好きな方を使っていいんだよ。』



ふとした場面で感じる彼の優しさ。


あぁ、やっぱり私はこの人が好き。



『桃子。どうしたの?お腹空いてない?
それとも、こういう店、苦手だった!?』



『ううん。違うの。
美味しいお料理と、今日、初めてあなたの姿を、この目でハッキリと見れた事が、

すごく嬉しくて‥‥胸がいっぱいなの。』



『‥‥うん。僕も嬉しいよ。今日、桃子に会う事が出来て。』



私の為にイブに会う時間を作ってくれた彼。


今日という日の思い出が今、


こうして二人で一緒に過ごしている時間と共に、


ゆっくりと私の記憶の中に刻み込まれてゆく。

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