しかしハントは納得したらしく、底意地の悪そうな顔で王子に言った。
「ふーん。ならお前は、舞子様や覇王様がいないと真面目に働かないってことか?」
「そうじゃな……いや、そうなる、のかな?」
「どっちだ。」
自分の中途半端な言い訳のせいで軽く頭が混乱し出した王子に代わって、今度はジーナが進み出た。
「とにかく、どうなんだ。コルニア城はどこにある?」
「教えない方がいいぜ、ハント。」
先ほどハントを呼びに行った長髪の若者が声を上げた。細い目をつり上げて、不服そうに腕を組んでいる。
「余計な情報をベラベラとしゃべる必要はねぇ。所詮は罪人の戯れ言だ。さっさと強制労働施設に放り込んで、おさらばしちまおう。」
「まぁ待て。案外面白いことになるかもしれねぇ。」
気が変わったのか、ハントは若者の肩を叩きながらそう言って宥めた。何か含んだような笑みで王子とジーナを見比べると、王子の傍らの猫は警戒している様子で、「フーッ」と唸った。
ハントは肩をすくめて言った。
「オレはぶっちゃけ、お前らがどんな理由で指名手配されたのか知らされていねぇし、興味もねぇ。ただお前らを捕まえなかったらオレら全員、覇王様に消されちまうから、こうして大人しく命令に従ってるだけだ。」
治安部隊の若者たちは黙りこくっていた。誰一人としてへらへらと笑う者はおらず、皆、ハントの言葉の真実味を噛み締めているかのように、苦い顔をしていた。何か言いかけた王子の前に手をかざして、ジーナはそれを制す。目線で促すと、ハントは続けてしゃべった。
「だから、お前らを『捕まえ』さえすれば、『後に起こったこと』なんてどうでもいいんだよ。暴れようが、覇王様をその地位から引きずりおろしちまおうが、オレらには関係ねぇ。」
「……では、私たちに協力してくれるのか?」
「さぁな。そもそもお前らが何を成そうとしてラディスパークに乗り込んできたのか、それすら知らねぇしな。」
ジーナとハントはしばし見つめあった。睨み合った、という表現の方が正しいかもしれない。お互い、相手の腹の底を読もうとして、しかし読み間違えた時の失敗を恐れて躊躇っていた。しかし、どちらも恐れの対象として思い浮かべている人物は同じだった。
「……コルニア城と強制労働施設の位置だけ教えてくれれば、それでいい。」
「……ああ、それならいいぜ。」