エレベーター前には、
「敦士!良太!拓也!」
はぐれた3人がいた。香山先生は全員に声をかけた。優太は、3人に幸輔の事情を話した。
「マジかよ…。」
「でも、幸輔は一緒に行くんだよな?」
「うん。」
敦士さん達は、その決意に頷いてくれた。まもなく、エレベーターが来た。
いじわるタワーズ。摩天楼。
強風が吹き荒れるこの場所で、1人、決戦を待っている男がいた。
「……。」
でも、その目は、穏やかだった。
「オレは…。」
写真に写っている、小さな女の子。
目に映っていたのは、それだった。
「いや…父ちゃんは…。」写真は、公園で楽しく遊んでいる小さな女の子の笑顔だった。
「お前を…愛していた…。」
写真が、風で飛ばされそうだった。
「でも…殺されたんだ。涼子の親に。」
こんな風が強い摩天楼でも、涙が乾かないのはなぜだろう。気づけば、自問自答していた。
当たり前。愛する娘を亡くしたのだから。
「どうか…今やっている計画を…悪く思わないでくれ。」
「どうか…。」
写真が、飛ばされていった。
空に舞っていき、やがて、見えなくなった。