京都はその後、嘘千万を並べて喋るが、心臓の音が漏れそうなくらいバクバクと体全体を波打っていた。
「そうか。しかし、いくら急いでいたからって言って塀を乗り越えてはいかんぞ。いくら若いからって言ってもね」
警官は、あっさり信じて説教を始めようとしたが…
「おい！急ぐぞ」
同僚の人が「そんなガキほっとけ」みたいな感じで呼ぶと、警官は「じゃあ早く学校に行くのだよ」と、言いさっさと行ってしまった。警官が突き当たりの路地を曲がったのを確認した京都はぷはぁ〜と、息を漏らしてその場でへたり込んでしまった。「よかった〜」と、京都が呟いた瞬間後ろから
「な〜に〜が〜良かったの？」
と、地獄から舞い戻った鬼のような声を後ろから京都は感じた。ハッと後ろを振り向くとそこには倒れたポリバケツからはって出てくる雪野の姿があった。
「（さっ貞子だぁぁぁぁぁ）」
京都は恐怖に打ちひしがれていた。そう、京都は苦肉の策としてまだ自分が共犯と知られていない事を利用し雪野だけをポリバケツに入れたのだ。まだ、生ゴミが残っているポリバケツに……
一年以上も片思いをしている人を……いくら絶体絶命のピンチとなっていると、言っても人をゴミバケツに入れる事はないだろ。京都が馬になって雪野を塀の裏側に隠すとか色々と安全でかつ清潔な方法もあっただろうに……本当にネジが一本ずれている。てか、おかしいだろう。それに若干雪野の体が臭い。
「まっまぁ警察をまけたからいいじゃん……？」
顔が真っ青な京都はそういって笑ってごまかそうとしたが
「いやっ！こんな臭うなんて耐えられないよ！何てことしてくれんの！？」
雪野はそういって京都の顔をきれいだった爪でおもいっきり引っ掻き回した。
京都の断末魔が町に響いた……と書きたいところだが、京都は必死に我慢した。また人目についたらいけないからだ。
「雪野さんってイメージと違って乱暴なんだね」
京都は引っ掻き回して少し落ち着いた雪野に笑って言うと勘に触ったのか再度引っ掻きまわされた。
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