子供のセカイ。126

アンヌ  2010-01-01投稿
閲覧数[366] 良い投票[0] 悪い投票[0]

妥協案としては、これがギリギリのラインだった。ハントが演技をしているだけで、実は覇王の味方をしている可能性や、ハントがジーナたちに協力したことがばれて、その結果覇王が治安部隊を壊滅させるような可能性を考慮すれば、互いを信じるにはまだ段階が早すぎた。
話が決まると、ハントは一行が向かおうとしている方角を指差した。
「あっちが、強制労働施設のある北の方角だ。ちなみにラディスパークの最果てに当たる。そしてコルニア城は、ラディスパークの中央寄りの東の方角にある。」
東の方角……。美香は右側に顔を向けた。ぐるっと見回してみるが、やはり軒を連ねる家々の他は何も見えない。
(ラディスパークは思ったよりずっと広いみたいだわ。きっとずいぶん行かないとお城は見えてこないわね……。)
美香は唇を引き結ぶと、耕太の服をつかんで引き留めた。二人から一行が遠ざかる。ひっそりと猫の方を指差して首をかしげた美香に対して、何のことかわからずに耕太は顔をしかめた。
美香は仕方なく耕太の耳元に口を寄せた。
「猫は耕太がいなくなっても消えないようにできる?」
かなり小声で囁くと、耕太はようやく納得したように頷いた。
「たぶん。」
「じゃあそろそろ離れましょう。」
城の位置を突き止めたらジーナ達と別行動を取る。最初からそういう話だった。
だが耕太はちらりとジーナの方を見てから首を振った。
「まだ別の情報がつかめるかもしれない。」
美香に呟いてから、耕太は再び一行の後を追いかけた。美香は逸る気持ちのせいでわずかに苛立ちながらも、ため息をついてその背中を追った。
王子は歩きながら、落ち着かなげに猫の前足の毛並みを撫でていた。きっと純真な心の持ち主だけに、こういう裏の駆け引きやらが苦手なのだろう。一方、肝の座ったジーナは耕太と同じ意見のようで、覇王に反逆心のあるハントから少しでも有力な情報を引き出すつもりらしく、瞳を光らせていた。
「お前の話を聞いていても、覇王のことばかりが出てくるな。支配者はどうした?所詮は側近にいいように操られるお飾りに過ぎないのか?」
「……ハッキリ言うじゃねぇか。まあその通り、だな。舞子様はまだ幼い。自分が覇王様の助言に従うことで、どんな事態になりつつあるのか、全くもってわかっておられねぇ。」



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 アンヌ 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ