7-4 心路つ
『抄司郎‥,』
平太はそんな抄司郎の姿を見て,一瞬申し訳ないと言う顔を見せたが,すぐに不気味な微笑みを浮かべた。
『全てその通りだ。
お前は相変わらず勘が鋭いな。』
『やはり。
何故武部と‥。』
平太は顔を歪めた。
『そういえばお前とは,幼少からの付き合いだったなぁ。読み書きも剣も,同じ場所,同じ時期,同じ師匠に教わり,兄弟同然の様に育てられた。』
『‥ああ,実力に差もなかった筈だ。』
『違う!!』
平太は声を荒げた。
『剣だけはっ‥!!』
幼少の頃の自分を思い出し,平太はその時の苦しみにふるえた。
『剣だけはいくら努力しても,お前にはかなわなかった!!』
『‥,』
『お前は師匠の跡取りの有力候補だった。つまりお前の剣は誰からも認められていたのだ。俺も認めて貰いたくて,必死に努力した。しかし最後までそれは叶わなかったのだ。』
平太は拳を握りしめた。
『お前が道場を出て行き四年がたった日の事だ。相変わらず俺は師匠の道場にいたが,ようやく俺を認めてくれる人が現れた。それが武部だよ。』
その時の喜びを噛み締める様に平太は言った。
『俺の才能を買うと武部は言った。だから俺は,師匠を捨てて武部の所へ行った。仕事が親友のお前を斬る事でも迷わず引き受けた。この人の為なら何でもすると,誓ったんだ。』
『平太‥』
『分かっている。俺を斬るのだな。望む所だ。』
平太は自信あり気に刀を抜いた。
『俺はあれから数々の修羅場を乗り越えて強くなった。今ならお前にも勝てる!!』
襲いかかった平太の剣を抄司郎は頭上で受け止めた。
確かに平太は抄司郎と同じ位。いや,それ以上と言っても過言ではない程強くなっていた。
≠≠続く≠≠