「ありがとうございましたー」
小さい扉からさらに小さな女の子とその両親が出ていく。
その後ろ姿を見届けてから自分も他のお客の元に注文を聞きに行く。
「愛美!これ15番テーブルね!!」
同僚の香菜からお皿を受け取りお客の元に運ぶ。
それを見たお客は花が咲いたように笑顔になる。
あたしはこの笑顔が大好きだ。
「お疲れさまでしたー」
他の店員より一足先にスタッフルームを後にする。
そしてさっきたくさんの人達が出入りしていた扉を自分が開けて出る。
――カランカラン…
心地よい音が聞こえてくる。
あたしはこの音も好き。
朝聞くと'頑張れ'って、帰りに聞くと'お疲れさま'って言われているようでとても落ち着く。
あたしはこの世に大好きなものが4つある。
1つ目は料理を運んだときに見れるお客の笑顔。
2つ目は'カランカラン'ってゆー音。
「愛美!待って!一緒に帰ろう!!」
香菜がお店の中から勢い良く飛び出してきた。
「うん!」
3つ目は中学からの親友、浅倉香菜。
あたし達は高校入学した次の日にここでバイトを始めた。
「今日もお疲れさま…」
2人でそのお店の看板を見上げる。
――"bear"