虚無の旅

Clan  2006-08-15投稿
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僕の時間はもう動いていない。
いつから止まっていたのかは分からない。でも、もう僕の時は動いてくれない。
気付いたときには独りだった。誰の慰めも無く、旅をしてきた。
目的も無く。ただ呆然と、当ても無く続く時間軸の中を立ち尽くしてきた。生きる意味なんて考えずに、生きてきた。でも、ある日を境に、僕の旅は目的有るものに変化した・・・

ここは樹と雫の街、ウォルティア。この街の最南端に位置する市場に少年はいた。
少年の名は無い。一時期はあったのだが、自分の実の親が付けてくれた名前じゃないと解ると直に、切り捨てたのだ。彼は捨て子であった。少年を引き取り、名前を付けてくれた老夫婦も、三年程前に他界してしまっている。だから、彼は当ても無い旅に出るしか道は無かったのである。
彼は市場の林檎を手に取った。
(へぇ、結構詰まってる)
「これ、いくらなんだ?」
少年は市場の大部分を陣取っている果物屋の親父に尋ねた。
「そうだなぁ、大体銅貨三枚だな」
「安いな、ここは。買うよ」
「毎度」
少年は林檎を受け取ると、市場から離れ、中央広場へと向かった。



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