第三話 京都の決意
京都が雪野を連れてやってきた場所は、知立高校から徒歩一時間かかった。一時間も掛った理由は、人の目を気にしながら歩いてきたからである。本来ならば二十分で到着する。さらに、雪野は、指名手配犯という理由以外にも人目を気にしたかった。なぜならば一時間前に隣にいる鏡京都に生ゴミが入っているポリバケツに入れられたからだ。臭くて人前には出たくない。京都が連れてきた場所は閑静な住宅街で平日の昼間だと人気がなくて、人目を気にしなくても良かった。京都が案内した場所は一軒のアパートだった
「ここは?」
雪野は、未だ手が震えていていながらだが、アパートを見上げて京都に聞いた。二人は自然と震えている手を握っていた。雪野は相変わらず震えていたが手を握っていて分かったが、京都の手も震えていた。笑って雪野を励まそうとしていたが京都自身も怖くてたまらないのだ。しかし、ここで「鏡君も手が震えているよ」と、言葉をいったらもうこの関係でいられなくなるかも知れないと見放されてしまうと思って言えなかった。こんな状況では頼れる人が誰もいない。
「ここは俺の幼馴染で一番信頼できる奴の家だよ」
「鏡君の?」
雪野が繰り返して聞くと「そうだよ」と明るく答えてくれた。しかし、幼馴染というと年齢が近いはず。平日の昼間にいるのか?という不安も覚えていたが、そんな雪野をみてだいたい予想したのか京都は、「そいつは大学生だから」と答え京都は笑いをこらえながら
「大丈夫だよ。眼と態度は怖いけどなかなかいい奴だよ」
と、付け加えたが「(目と態度が怖いだけでいい人じゃないんじゃないのか?)」と、思った雪野だが、ここまで来てしまったらもう後には引けないと思った……と、書きたいところだが、実際は京都が手を放してくれないだけだ。京都は逃げたい衝動に駆られている雪野を無視して「俺だ!京都だ!」と、言ってドアを開けさせようとしてドアを叩いた