横の方から男の人の声で『綺麗ですね。』と喋りかけられた。
私は、……。
急に喋りかけられた事もあって『えっ?』と答えた。
父が、車で待っている事もあり。
ベンチから立ち上がり愛想悪く。相手の顔を見ずに足早にその場を後にした。
中庭から 廊下に入った時だった。
目の前に、 今日診察して頂いた。
心臓外科の山口先生が中庭を眺めていた。
『今日は、ありがとうございました。』 と話しかけた。
すると。
『あっ いえいえ これが、私の仕事だしね。』と笑顔で答えてくれた。
私は、『それでは、』とその場を後にしようとした時……。
『ここから 見てたけどベンチに座ってる彼に喋りかけられました?』と先生に問われた。
私は、そう言われ中庭のベンチの方を見ると 色白で、痩せた青年が座っていた。
『話しかけられましたが、 何か?』
『嫌! 彼 私が、担当している 患者さんでね。
病気が コンプレックスでね。
内気なんだよ。
たまたま ここを 通って中庭を見てたら 彼が、あなた に 喋りかける光景を見て。
思わず 足をとめたんだよ。』
私は、先生に 急にそんな事を言われたが、ハッキリ言って 意味が、解らなかった。
先生に軽く会釈をして 父が待つ車に向かった。
『ごめんね。
待たせたね お父さん』と言いながら慌ただしく車に乗ると。
『何やってたんだよ?
何かあったかと思ったよ』
私は、父に冗談ぽく『ごめんね ごめんねぇ〜』と漫才師のネタで謝った。
父に 『あほ』と言われながら軽く頭を 叩かれ父が、運転する車でお家に向かった。
つづく。