デシマエシン?

兼古 朝知  2010-01-05投稿
閲覧数[639] 良い投票[0] 悪い投票[0]


その男の名は
出島 恵信
(デシマ エシン)と言った。

私が笑って
「中国人みたいな
名前だね」と言うと
彼も穏やかに笑い返した。

彼は中学二年の二学期に転入してきた。

席が近かったので、
私と彼はよく話していた。
いつしか、彼とは
親友と呼べる
仲にまでなっていた。

彼の家に
行ったこともある。
彼の部屋には
余計なものは一切なく、
すっきりしていた。

「不必要なものは
イラナイからね」

それが彼の言い分だった。
彼の性格を
よく知っていた私は、
妙に納得したものだ。




中三の秋のことだ。

私の住むこのド田舎な
村には、ひとつの
言い伝えがあった。

“夕方に海沿いを歩けば
骨だけになって
帰ってくることになる”
と。

何故そうなるかは
知らない。
まず信じてもいない。

だが、村のお年寄りから
夕方に海に行くことを
固く止められていたので、
行ったことはなかった。

ところが、クラスの
リーダー格の男が、ある日
突然、単身 行ってくると
豪語したのだ。
勿論、ただの興味本意だ。


「何故そこに行くだけで
こんなに
騒がれてるんだ?」

不思議そうに問うてきた
出島に、私は言い伝えを
説明した。
彼は話を危機ながら、
興味深そうに頷いていた。

次の日、リーダー格の男は
登校してこなかった。
クラスメイトたちは、恐る恐る
昼の海岸へ向かった。

波打ち際には
真っ白な固形物があった。

それを
骨だと理解した瞬間、
クラスメイトたちは
悲鳴をあげた。


――その噂は
たちまち広がり、
カメラを携えて行く者も、
ボイスレコーダーを
準備して行く者も、
それら全てを
破壊されたあとで、
他と同じように
骨だけになった。

噂が噂を呼び、
テレビ局まで動き出したが
生放送であれ何であれ、
正体は一切
わからないままで、
夕方に海に現れた者は
皆 消えていった。

私は恐怖で
行こうとも思わなかった。
そんな中、
“彼”は私に言った。

「この村は何でこんなに
自殺願望者が
多いんだろう?」

私には
返す言葉が見つからず、

「そんなの
言うもんじゃない」

と だけ答えた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 兼古 朝知 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]
コルセット並の着圧!
モノ足りない筈なし


▲ページトップ