デシマエシン?

兼古 朝知  2010-01-05投稿
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ある日クラスメイトの一人が
提案した。

「皆でカメラを持って
海岸沿いに行こう」と。

それに猛反論する者も
勿論いたが、
皆で行けば一人は
生き残るはずだ と、
その男は半ば強引に
押し切った。

「何て馬鹿な発案だ」

眉をひそめて言う私に、
“彼”…出島は

「面倒事になったね」

と言った。
その表情があまりに
穏やかだったため、

「お前…死ぬかも
しれないのに よく
そんな顔できるな」

と私が言うと、彼は

「別に死ぬ時期に
こだわるつもりは
ないしな」

と 笑ってみせた。

「人間離れしたことを
言うもんだ」

溜め息混じりに
私が言うと、彼は
「よく言われる」と
肩を竦めるのだった。


その日の夕方、
私たちは集団で
海岸に向かった。

提案者は実に楽しそうに
笑っていた。

「何がそんなに
楽しいんだ…?」

私は ボソッと言った後で、
小さく舌打ちした。

協力する気も失せ、
私は持っていた
デジカメの電源を切った。




――突然だった。


気づけばクラスメイトが
地に伏していた。
提案者も薄黄色の砂に
転がっていた。

誰一人出血はない…が
誰一人息をしていない。


「出島…?」

私は彼の名を呼んだ。
何故か私だけが
立てている。
彼を探したが…

いない、いない、いない。

見当たらなかった。


――ガリ、ガリッ。ブチッ。

背後から 生々しい、肉を
裂く音が聞こえた。
振り返ると…。

「でし ま」

私は小さく漏らした。
そこにいたのは
提案者の男の
腹を引き裂き、その臓物を
喰らっている出島がいた。

「俺さぁ」

呟き、出島は ぐるんと
私を見た。

びくりと体が強ばり、
私は固まる。

「ヒトが嫌いなんだ」

彼は いつも通りの
穏やかな表情で言う。

「余計なものは
イラナイからね…前にも
言ったろう?」

「あ あぁ」

私は震える声で答えた。
そして一つ確信する。

私は 死ぬ。

「私も その一人か…?」

私が尋ねると、
彼は言った。

「そうだよ…
でも…さっきの君は
好きだった」

「さっき?」

私は首をかしげる。

彼は提案者を掴んでいた
手を放し、私のもとへ
歩み寄った。
ドチャリと音を立てて
手放された提案者の
死体は転がった。

流れ出た血液は
海水に混じり、
薄まって消えていく。

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