『はい‥これ‥私からもプレゼント。』
『え!?桃子からのプレゼント!?
嬉しいな。』
これは内緒だけど、
妹に一緒に選んでもらったんだ。
『おっ‥カッコイイ。ベルトだぁ。
ありがとっ桃子!!』
笑顔で子供みたいに無邪気になる彼。
うふふ。
もともと、おめめぱっちりで可愛い顔してるんだぁ。
両手いっぱいのガーベラの花と、
両手いっぱいのあなたの愛。
いっぱいいっぱいもらったから、
思わず涙があふれた。
『どうして泣くの!?桃子‥‥。』
彼が優しく頭をなでてくれる。
『ううん。何でもない。大丈夫だから‥‥‥。』
『泣かないで‥‥桃子‥‥‥。』
優しく、
強く、
抱きしめられた。
そして、
甘い甘いキス。
『実はね、私の目が見えるのは、イブの今日一日だけなの。
明日になれば、また、もとの私に戻ってしまうの。』
私の言葉に、
彼は、それほど驚いた様子もなく、
いつもの様に、
優しく、
落ち着いた口調で言った。
『桃子。“桜梅桃李(オウバイトオリ)って言葉を知ってる!?』
『オウバイトウリ?』
『そう。桜は桜。
梅は梅。桃は桃。
李(スモモ)は李(スモモ)。
どれもみな、美しい花を咲かせる。
それぞれがみな、力いっぱい咲いている。
けれど、桜が梅になる事も、
梅が桃になる事も、
桃が李になる事も出来ない。
これらの花の様に、人間も、ありのまま、自分らしく咲き誇るのが、
もっとも美しいという意味だよ。』
『へぇ‥。そんな意味があるんだぁ。』
『だから桃子も‥‥
目が見えないのは、桃子の個性。
僕が桃子を好きな理由に、
桃子の目が見えるとか、見えないというのは関係ない。
これからも、
桃子が桃子であり続けてくれたら、
僕は、それが一番嬉しい。』
『‥っ‥ひっ‥‥。』
声にならない。
あなたのその言葉が、
あまりにも嬉しくて‥‥
声にならない‥‥。