私の声は封印されている。
誰に封印されたのはわからない。
生まれたときから声が出なかった。
対象相手にされない私は、仕事が少なかった。
だいたいは工場の掃除当番などの雑用だった。
こんな私でも友達がいた。
人気俳優の〔坂本 弘史〕(さかもと ひろし)と幼なじみの〔井上 純子〕(いのうえ じゅんこ)だった。
いつものように三人で生ビールを飲んでいると弘史が酔っぱらいながら私に抱きついてきた。
私は、びっくりした。
弘史は純子と付き合っているからだ。
運よく純子は眠っていた。
「俺なぁ…、純子と別れようとおもう。」