そこで僕たちが見たのは、まるで地獄のようなものだった。
まだ少し咲いている桜の花びらにべっとりと赤い、何かが付いていた。
−−−−血だ。
それも少しじゃない。
桜の花びらのほとんどに血がべっとりとこびりついていたのだ。
そして桜の木の根元には頭のない佐賀良二と思われる死体だった。
奈々
「……………!!」
達也
「うっ…………!」
裕也
「なっ…………!」
柚姫
「ひっ…………!」
その光景を見た瞬間、腹から込み上げてくる物があったがぎりぎりの所で我慢することが出来た。
奈々
「っ!!姫野!一体、何があったの?答えなさい!!」
泣きじゃくっている子がビクッと肩を震わせて奈々さんの方を見た。
どうやら彼女が姫野らしい。
姫野
「わかりません……私……外の空気を吸おうと…ここに来たら……佐賀さんが……!」
???
「もういい……もういいから。
井隅さん、とりあえずみんなをペンションの中へ……」
奈々
「え、ええ……そうね」
奈々さんがそう答えるとみんな、ペンションの中に入って行った。
奈々さんと声を掛けた男性を除いて、ペンションの中に入ると僕たちは、食堂に集まった。
食堂には、丸テーブルが三つ置いてあり、その一つに僕と裕也、柚姫が座った。
達也
「…………………」
裕也
「大丈夫か、達也?」
そう言う裕也を見るとどこから持ってきたのか、お茶を飲んでいた。
平然とお茶を飲んでいる裕也を見て、僕は安堵することができた。
達也
「う、うん……大丈夫」
裕也
「そうか?おまえ、放心状態になってたぞ」
達也
「放心状態って……」
そう言いながら僕は、どこからか視線を感じた。
その視線を辿るとちょうど向かい側に座る二人の女の子と目が合った。
達也
(……双子かな?そっくりだけど……)
そんな事を思っているとその二人が近づいて来た。
???
「こんばんは」
達也
「えっ……あ…うん、こんばんは?」
間の抜けた返事を返した僕の前に例の双子が立っていた。