彼等と旅を共にして2年近く月日が経った。記憶は戻らないが、そんな事は如何でもいい事だ。俺とワンダは婚姻の約束を交わし、もう少しで式を挙げる。幸せの絶頂期だ…それに、式を挙げる前に彼女の妊娠が判った。俺は嬉しい半面、こんな俺が父親になる権利はあるのだろうか…時々思ってしまう。
だが、そんな幸せを奴等が踏み躙った。街の外で何時もの様に、収入を得る為にテントを張り商売を始めた。街には薬屋があるが全部偽物だ…食料を買出しにワンダとレダが街に行った。
その夜、テントの外が騒がしい。犬が吠えていて、数人の男の声と女の声がした。言い争っている声で俺はテントを出ると、ワンダとレダそれに3人の衛視がいた。
「泥棒だって!?フザケンナよ!」
レダの怒鳴り声。衛視はワンダの手を掴み、連れ出そうとしている。
「何をする気だ!」
俺は近寄りながら言う。俺の声でレダは振り向き、直ぐに衛視を指差しながら言った。
「こいつ等、ワンダが泥棒したって言い出すんだよ!泥棒なんてしてないのに、泥棒扱いだ!!」
「証拠があるんだ。調べれば判る」
衛視は自信に満ちた表情で言う。俺は3人を睨み付けて静かな口調で言う。殺気に近い気配を感じて、3人の衛視は顔色を変える。
「証拠は何だ?ここで、出せないのか」
ワンダの手を掴んでいた衛視は彼女の手を離し、覚えていろ!と捨て台詞を吐きその場を去った。
そして、翌日の早朝…俺を含めて全員が役人一人と数人の衛視によって街に連行された。俺は首と両手を一緒に拘束できる囚人様の枷をはめられ、囚人が乗る鉄格子で出来た馬車に無理やり乗せられて街の連中に晒し者にされた。石を投げられ住人の罵声を浴びながら、コノ街を治めている領主の屋敷に俺と彼等は連れて行かれた。