白い天使のうた (14)

宮平マリノ  2010-01-08投稿
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大資の絵本の読み聞かせは、始め、
一人二人の子供をむりやり連れてきては座らせ、
聞かせるというよりは、むしろ、聞いてもらう、という感じであった。

しかし、つっかえていた言葉も、だいぶ緊張が解けてくると、
感動溢れて、そこはとても穏やかな優しさの流れる空間となってきた。

そうすると、子供たちも少しずつ自分から集まるようになり、
何度も聞いている子供たちの中には、
自分のお気に入りの本を差し出すようになった。

この施設のほとんどの子供たちは、
本当に親から見放された、見捨てられたような子供たちである。

親が面談に来るなんてことはほとんどなかった。
この子たちの目の前で、書面にサインと捺印を押し、現金を置いて行った親たちである。

誰もが喪失感を持っていたし、
子供たちの目を見れば、失われた、壊されたものの大きさは一目瞭然であった。

誰もが、ケンカをする訳でなく、仲間意識を持つ訳でもなく、
大勢の中にいて、一人で生きていた。

これ以上大切なものを作って、それを失う悲しみを避けるかのように。




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