りらは、少しずつ表情を増していった。
始め、遠くから眺めていた、施設の他の子供たちの動きにも、
少しずつ距離を縮め、近くまで入るようになっていた。
それでも、他の子たちのように、物の貸し借りをすることはできず、
大資の読む、読み聞かせの中にいて、他の子たちの笑うのを見て、
自分も笑ってみたり、
自分もその中で読んでほしい本を持って行くけども、
渡すことのできなかった本を、戻って来て塚本に渡した。
塚本としては、
自分だけでなく、施設の子たちと一緒にいて話せるようになってほしかったが、
りらはまだ、
うたを歌うとき以外は、言葉が自由に出てこなかった。
いつから言葉を失ってしまったのだろう、
話したい事や、言いたいことが次第に満ちてゆくのに、
他の子たちのように言葉を出せない。
自分のもどかしさに、
時々、息を荒らして喉元を抑えた。
話したい言葉が、口から出てこない。
唇が動かない。
歌う時以外はー。
涙をいっぱいに貯めて、溢れる涙だけが、
りらのこころの内を吐き出しているようだった。