売店を出た後、俺達は引き続き校舎内を巡り、30分後にそれを終えた。その後俺達は学園から出た。そして俺達3人は5分もしないうちに駅に着き、「桜野行き」の電車に乗った。
「ふー、歩き回ったら疲れたね。」
怜が両手で吊り革に掴まって言った。かばんは座席の横に立てかけてある。
「れい、運動しなさ過ぎだろ。少しはしろよ。こんなので疲れてどうするよ。」
俺は笑って怜に言った。かばんが重いので俺は持っていたかばんを怜のかばんの近くに置く。
「そういえば漆原君は中学の時何やってたんだっけ?」
今まで黙っていたメガネが口を開く。
「ち、中学…?うーん、テニス部だったけど……」
怜は少し俯き加減に答えた。
「あっ、テニスか。いいよね、テニスは。」
「うん……」
”次は〜、灰谷市〜灰谷市〜”
車内でアナウンスが聞こえる。
「あっ、俺、この駅だから降りる。バイバイ。」
「うん、じゃあね。」
メガネはそう言って電車から降りていった。俺はメガネに対して手を小さく振った。
メガネが降りた後、二人の間に沈黙が流れる。怜はずっと窓から外を眺めていた。俺は少し気になっていることを怜に聞いた。
「れい、中学んとき、何かあったのか?」
怜はこっちを向き、笑って返してきた。
「あー、さっきのこと?何でもないよ。俺、テニス弱くてさ。それ思い出して少し憂鬱になっただけ。心配しなくていいよ。」
怜は表情を再び明るくした。いつもの怜に戻り、俺は少し安堵した。
”次は〜、北城〜北城〜”
「じゃあな、れい。また明日。」
「うん、またね。」
電車が北城駅で停車すると俺は怜にそう言って別れた。怜も笑顔で返した。俺はまだ怜のことが気になり、電車が北城駅を出てからも見送るが、怜がこっちに手を振ってきたのでホッとして俺も手を振り返し、改札に向かった。
家に帰ると俺は部屋に入り、明日の用意に取り掛かった。制服を脱ぎ、部屋着に着替えて明日の用意をしていると、母が部屋に入ってきた。
「あら、帰ってきてたの?」
「うん……」
「そういえば教科書全部あるか確認した?一応しておきなさい。」
「今からするよ。」
俺がそう言うと母は部屋から出ていった。