猛は勢いよく光希に言った後、満足そうに笑って出ていった。
光「…猛も波音も、うちのことよく見てんねんなあ…」
独り残された光希は周りをぐるりと見渡した。
独りだと広く思える体育館の隅には黒いピアノがひっそりと置いてあった。
光希はしばらくそれを睨むように見つめた後、近づいて行った。
昨日掃除したものの、そのピアノは埃っぽく古そうだった。
光希が開けると意外にも鍵盤はまだ綺麗で一音光希が鳴らしてみると綺麗な音が体育館に響いた。
光「……弾ける…かな」
光希は忘れかけていた記憶にある曲を奏で始めた――
パチパチ
曲が終わると光希の背後から拍手が聞こえてきた。
光希が驚いて振り返ると、聖二はにっこり微笑んだ
聖「よく考えたら、みっきーがピアノで演奏してるのは聞いたことなかったな」
光「いつからおったん?」
聖「んーその曲が始まったくらいかな」
光「…ずっと聞いてたんや」
聖「あのさ…一個聞いていい?」
光「?」
聖「何でピアノ辞めたん?何で…日本に帰ってきたん?」
光「…二個やん?」
光希はくすっと笑った
聖「あ。ほんまや」