それはまるで、
りらの歌の世界、
こころの願い、
そのもののようであった。
歌いながら、りらが生き生きとしていくのを塚本は見た。
時に、りらの声が、
ハーモニーのように、重なるのが聞こえた。
通常、二人で歌う声が、声質によって、互いの声と声の間に入って、
二人で歌っているのに、三層にも五層にもまるで合唱しているかのように聞こえる時がある。
塚本自身、そんなハーモニーを表わすデュオを何度も見てきたが、
りらが歌う声の中には、
もう一人りらのような天使の声が聞こえてきた。
そんな時は決まって、
白いハトの羽のようなものがひとつ、
ふたつ、
空からひらひらと落ちてきた。
雲間から、陽光が射すことも度々あった。
「りらが歌うことを、
天が喜んでいるようだ。」
塚本は、幾度となく、その言葉を口にした。