私は仕事を辞めようと思い、辞表を書いてカレに渡した。
カレは驚いて私を会議室へと呼んだ。
「辞めるのか…?辞めなくてもいいだろう?」
「心配してくれなくてもいいよ。私が決めた事だし。大丈夫。」
私は平然を装って、カレにそう言った。
「ごめん。」
1番言ってほしくないセリフをカレは口にする。
「…謝らないでよ。虚しくなる。」
私は『サヨナラ』を言わずに会議室を出て行こうとした。
カレは慌てて私の手を掴んだ。
「離してよ…。もう話す事なんてないでしょ?」
私はまた涙目になり、カレを睨んだ。
カレは私を引っ張り、キツく抱きしめた。
「やだ…やめてよ。」
小声でそう呟くと、さらにきつく…。
「本当に…好きなんだ。でも、このまま続けても、お互いよくないだろう。だから…早くいい人見つけてくれ…。」
最後まで勝手だ…。
男はいつもそうだ…。
勝手に好きになって…
勝手に別れを告げて…
私があなたを忘れるまで…どのくらいの時間が必要になる?
たぶん…
忘れる事なんて出来ない。
私はカレを突き放して、会議室を出た。
そのままトイレに駆け込み…
声を殺して泣いた…。
会社を辞めて、カレと逢わなくなって、1年が過ぎる頃…
新しい恋はしたけど、私にはまだあの人の影が見え隠れしていた。
電話はダメだと言われていたが、電話をしてしまった。
呼び出し音は鳴らず…
使われていない番号になっていた。
少し胸の奥が痛い…。
前の会社の同僚に、カレの事を聞いた。
カレはもう…
いない…。
私と別れ、会社を辞めた後にカレはすぐ会社を辞めていた。
治療をする為に…。
詳しくはわからないけど…
私と別れた後、
病気の為と言って会社を辞めて…
今はどうしてるのかわからない…。
今思えば、カレはたまに病院に行ったり、私といる時も薬をのんでいたりしていた…。
同僚は、また戻ってくるとは言ってる…。
でも、私はもう
カレに逢えない…。
こんなに引きずるなら、会社を辞めなければよかったと後悔した…。
私は…
今でもカレを忘れられずにいる…。
『ある愛の表し方』終