その日から、
りらはみんなの仲間入りとなった。
言葉を話せなくても、
うたを歌い出せば、
まるでそれがみんなとの会話のようであった。
「そのうち、歌で会話するようになるぞ。」
塚本は、そんなことを期待した。
それからしばらくして、
塚本は隣町に引っ越すことになり、
ほとんど毎日のように通っていた施設には、
あまり行けなくなった。
それでも、子供たちの様子や変化は、
大資が報告してくれたし、
子供たちが自主的に、
地域のボランティアとして、絵本の読み聞かせを始めるようになったのは、
地元新聞の小さな記事に取り上げられたことからも知ることが出来た。
「りらちゃんが施設内で歌うようになってから、
掃除のおばちゃんが『ハトの羽が多い”とぼやくようになりましたよ。」
大資が意味ありげに笑った。
「りらちゃん、最近施設の外でも、呼ばれて歌うようになりました。」
そう、大資は誇らし気に報告してくれた。
「あの子はきっと、もっと羽ばたくぞ。」
「いや、本当にそうかもしれない。」
「『なにせ、天使と一緒に歌っているのだからな。』」
二人は、そう言って、声を合わせて笑った。