翌日彩は昼に、少年達が武士のたしなみの弓矢や剣道をしに通っている日新館へ行った。制服を着ていると怪しまれるのでさつきの着物を着て、日本髪を結い出かけた。「来てくれたのだな!」源吉が明るく言う。少年達は丁度昼休みの時間帯で井戸水で顔を洗ったり腕相撲をしたり、昼食を食べたりしている少年もいた。少年達はわらわらと彩に寄ってきた。「そうだ、コレあたしの制服のポケットに入っていたからあげる!甘くて美味しいよ」彩が出したのはチョコだった。少年達は慎重にチョコを見、ぱくっと直ぐに食べた。「どう?」「ん、美味だな!」儀三郎が頬を赤らめながら言った。「俺も未来に行ってみたい…」そっと呟く貞吉。「俺もなぁ…」続いて勝太郎も言う。「あ、そういえばあの人誰?ずっとさっきから木刀振り回してるけど…」彩が不思議そうに言った。「あぁ、伊東悌次郎だ。あいつ、人見知りで口数少ないんだ。」「ふぅーん…」懸命に練習を行っている悌次郎は、汗が飛び散っていた。彩がぼーっと見ていいると、視線に気付いたのか射すくめる様な目で彩を見つめた。その顔は涼しげな顔、いわゆる容姿淡麗な顔立ち。彩は悌次郎の顔に少し見とれてしまった。悌次郎は視線を反らし、また練習を続けた。彩の心に少し、恋が芽生えた…
続く