楽しそうに話している美咲。
目の前であんな風にされると逆にこっちの会話が弾まない。
「あのさ・・・」
「あのさ・・・」
麗二と言葉がかぶる。
「いいよ。麗二から。」
こういうとき、二人で「どうぞ」とか言えばドラマっぽくていいのに・・・
麗二はなにも言わずにうなずいてから話した。
「俺、今年の夏が・・・やっぱなんでもネェ。」
意味有り気に話すのをやめる麗二。
あたしは別に深く問うつもりなんてない。面倒なだけだもん。
「・・・」
「・・・」
沈黙が続く。
いつの間にか美咲と啓太が遠くにいた。
「綾乃お!早くぅ!!!!!!!!」
美咲が叫ぶ。
啓太も大きく手を振っている。
特にあたしは啓太と仲の言い訳ではない。
ただ、友達の彼氏というだけだ。
あたしは答えるように手を振ったつもりだったが、あっちには見えていないようだった。
「ばか。もっと大きく手を触れよ。」
そういってあたしの手首をつかんで麗二は大きく横に振った。
あたしの腕はかちこちに固まっていた。こんな風に触れられたことが少ないからだ。約半年付き合っていてもこういうので緊張してしまう。
二人に追いつくと美咲はまた、啓太と話し始めた。
「お熱いこと。」
嫌味半分でそっとつぶやくと、麗二はあたしの手をとって腕を組んだ。
「腕組むのってはじめてじゃね?!」
少し嬉しそうににこっと笑う。
今までそんな事をしたことのなかった麗二がどうして、こんなに積極的になったのか、あたしはあの言いかけた言葉に隠されてると思ったが、聞き出すのがめんどくさくてやめてしまった。