■始まりの鐘■
…ピピピピピ…
目覚ましの音だけで目が覚めたのは初めてだった。
部屋に入り込む日差しは朝を告げている。
真奈はゆっくり起き上がってカーテンを開けた。
―今日は高校の入学式。
だからだろうか。
何かが決まっている気がする。
別に世界が輝いて見えるとか甘ったれた事じゃない。
でもだからといって人生に失望してるわけでもない。
ただバカらしいだけ。
“友達”ってモノがね。
「真ー奈ー」
スリッパの走る音がだんだん近づいていてくる。
勢いよく開いたドアから顔をのぞかせたのはお母さんだった。
「あー起きてたの」
「あのさ、ノック。いつもいってるよね」
真奈は新品の制服に袖を通す。
うん、新品らしい鼻につくにおい。
「結構イケてるじゃん」
「…ども」
鏡に写る自分はあまりにも無愛想で見てて殴りたくなった。
朝ご飯もそこそこに二人は車に乗り込み、入学式が行われる学校へむかった。
式が終わってからクラス分けされたプリントを眺める。
「一年C組…」
C組とか微妙…。
とにかく教室へ向かう。
教室にはたくさんの生徒がいた。
―…人が怖い。
そう思うのは可笑しなことなのだろうか。
中学2年の時、生まれて初めてイジメにあった。
それからは人に対して恐怖をおぼえるようになった。
高鳴る心臓をおさえ、ノブに力をこめる。
静かにドアを開けそそくさと自分の席につくと一気に力が抜けた。
しかしそれは一瞬だけのこと。
その問題は隣の男子だった。
茶髪や金髪の規模を明らかに超している
鮮やかなピンク色。
「―…。」
真奈は思わず言葉を失った。
嘘じゃん?
ピンクて…。
頭の中には同じ言葉がグルグルと回りだす。
…よく見たら口にピアスあいてるっ!耳のピアスも半端ないなぁ…。
…あっ…。
「何」
まずい目があったっ!
焦る真奈の目と、ガンをとばす男子の目が空中で激突していた。