ぽん  2010-01-10投稿
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あの人の機嫌ひとつであたしは右耳の聴力を失った

その代わりに何か得たものはあったのだろうか

それは今でもわからない






大人の顔色を窺い、周りの空気を読み、
望まれている自分を演じる

それがあたしに課せられた生き方だった


普通の人間になら備わっているであろう何かが、あたしには大きく欠落している

欺く

騙す

嘘をつく


それが日常だったあたしにはそれらに対して罪悪感がない


犯罪を犯すことにも躊躇いはない









父が母の首を絞め、殺人未遂で逮捕された


それがあたしの記憶の始まりだ







つづく


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