熱すぎず冷たすぎず、キミの生温い体温に触れ、先の見えない恋に足を踏み入れたのは、いつの日だったか……
始まりは枯れ葉散る秋の終わり、富士も雪化粧をし冬支度も整いつつある11月上旬、金曜日の夕方。
いつもより少し早めに仕事を終えた私は、毎日の日課のようにその足を休憩室に向けた。
そして後ろから、パタンパタンと特徴の有る足音が近付いてくる。私は振り返ると「お茶行くよ!」と一言。独特な足音の主は立ち止まり近くに有ったイスに腰かけると、パソコンと向き合って考えこんでいる。
「何??まだ仕事残ってる??先に一服しようよ〜」
いつもと変わらぬやり取り、しかしいつもなら"そうだな"と、ここで立ち上がるはずなのだが…
「じゃぁ久々に早く終わったし、飲みでも行っちゃう??」
私は半分冗談、半分本気で付け加える。
しばしの沈黙の後、「今日は早く終われたし、明日は休みだし、たまには飲みにでも行くかぁ」
思いもよらぬ一言が返ってきた。
鼓動が少し早くなる、それどころか動悸すら感じる。高鳴る胸の内を悟られまいと、平然を装い話しを続けた。
この時からゴールなき恋の歯車が回り始めていた。