物凄い緊張感が康太の体に充満する。心臓がバクバク外の冷たい空気に触れるとより一層胸の鼓動は高まる。今日は地元のマラソン大会。海に面したこの10キロのシーサイドコースは成人男性には恐怖感を与える。
しかし、彼らには大きなチャレンジ精神が備わっており、己の限界とゴール時の達成感を酔いしれたいと思うのであった。
康太もその一人で、今年で25になりちょうどその記念にでもという気持ちでこのマラソン大会に挑戦した。
そしていよいよスタート一分前。彼の胸の鼓動はピークに達していた。
この先で待っている地獄の苦しみが今にも緊張感が彼を悩ませた。
足がガタガタと震える。いっその事、この場から逃げ出したいという感情といや、俺は最後まで走りとげるんだという感情の二つがジレンマとして彼を煩悶させた。
スタート5秒前、4、3、2、1パンとピストルの音が響いた。俺は走っている。足が勝手に動き出したんだ。まるで、飛行機が離陸するように彼は走り出した。もう先程までの緊張感は無い。なにしろ、もうスタートしてしまったのだから。
もう後戻りはできない。俺は絶対に完走するんだ。シーサイドコースの為、強い浜風がランナーを襲う。
西から東へ流れる風が東から西へ行こうとするランナーを引き返せと言わんばかりランナーを苦しませる。顔や全身に受ける風がうっとぉしい。
コースから見える海が太陽の光を受けキラキラと輝きながら、苦しむ俺らを笑っている。海はもっと苦しいの、もっともがけと言わんばかり嘲笑する。
スタートから、四分の一が経った頃、康太の息が荒くなってきた。
ハァハァと息がもれる俺のスタミナはこんな事では絶対に負けない。そして、後ろから30代前半と思われるランナーに追い越される。
チクショー、抜かされたぜ、あんなヒョロっとした弱そうな男に。
アイツはダッシュでぬかされたら俺のスタミナがもたない。ここは、少し温存気味でいくか。