気象予報士は午後からの降水確率について、50%という予測をしていた。予報士というからには、せめて49%か51%として、そこに男らしく自負を示すべきだと思う。私は男らしく傘を置いて家をでた。
車窓から見えた雲は迷子の子供のような不安気な様子だったが、まだ泣きだしてはいなかった。
しかし、駅舎を出ようとした私に聞こえてきたのははっきりとした雨音、降水確率50%なら普通雨は降るのだ…ちくしょう。
しかも、子供だって知っている、雨の日は…バスは混む。バス停には屋根のある部分をはみ出しバスロータリーへと降りる階段にまで並ぶほどの行列ができていた。
しかたなく私はその最後尾に立った。
東京には空がない、それでも雨は降る。ぼんやりとそんなことを考えていた。
突然、雨がやんだ。
しかし、雨音は聞こえる。見上げるとそこには傘があった。振り返ると私の一段上に傘をさした女性がいた。一段ずれの相合い傘。少し微笑んで頭をさげ、私はバス停に視線をもどした。
雨は相変わらず降り続いている。私は傘を持っていない。もう少しの間バスが来ないといいと思いながら。