中川と繭子は、父親の別荘に到着した―\r
「此処が、親父が建てた、別荘・・・。来た事無いだろ?」
車を降りるなり、繭子は、別荘の外観に釘付けになった。
「何?此処・・・?凄いじゃん、前の別荘は、結構、年季入ってたけど・・・。」
「一年半位前に、建てたんだ、親父が。前のは、爺さんが建てた物で、古かったからな。ここんとこ、景気悪くて、土地も安く手に入ったから、新築したんだ。」
「ふぅ〜ん・・・。凄っい!!此処、普段使って無いの?」
繭子は、中川の言う言葉を半分以上聞かずに、興奮した様子で、続けた―\r
「うん、親父も殆んど来て無いかな?兄さんやお袋は、お盆や連休に何度か来たみたいだけど。」
「秀樹はさぁ・・・、此処に、しょっちゅう、女の子とか連れ込んでる訳?」
「人聞き悪りぃな・・・。しょっちゅうじゃ無いよ、何度かは、来た事有るって位だよ。」
「ふぅ〜ん・・・。」
繭子は、中川の顔を下から覗き込んだ。
「マジだって。彼女は来たよ、一度だけ・・・。」
「彼女・・・、居るんだぁ?」
「居るよ。親父が煩いからね、結婚しろって。好きかどうか・・・、って聞かれたら、微妙だけどさ。」
中川は、そう言うと、繭子の背中を押し、玄関の鍵を開けた。
「うわぁ〜!!凄い、何、此処・・・?」
玄関の真上に吊されたシャンデリアと、高い天井、広い玄関ホールが繭子の目に入った―\r
中川は、見慣れた風景に、呆れた様子で、繭子に、対応した。
「二階に、俺が遣っても良い部屋が有るんだ。行こ、二階・・・。」
一階の全てを興味深げに見たがっていた繭子を、中川は、無理矢理、二階へ追いやった。
「一階も見たかったなぁ・・・。」
「此処遣った事が、親父にバレたら、小煩い事言われんだ。だから、勘弁してよ。」
「え・・・?そうなの?うん・・・、解った・・・。」
繭子は、そう言うと、納得が行かない様子で、二階へ続く階段を登り始めた。
中川は、私の事を汚した自分の使用が許された、二階の一番奥の部屋へ繭子を案内した。
「此処が、秀樹の部屋?」
「うん・・・。狭いだろ?結構。」
繭子は、ベットの下に転がった、何かを拾い上げた。
「何これ?黒いガムテープ。あぁ!!もしかして、此処に、知らない女の子連れ込んで、まさか、無理矢理しちゃったりしてる訳?」
私を以前に、自分の部屋に連れて来たままになっていた事を、中川は、すっかり忘れてしまっていた―\r