「おいおい、まさか・・・。俺がそんな事する様に見える?」
「見える・・・。」
中川が、少したじろぐ様な表情を見せると繭子は、空気を読み取り、こう言った。
「冗談・・・。冗談だよ。もし、そうじゃ無いんなら・・・、そう言う趣味が有るの?」
「そう言う趣味って?」
「SMとか、そう言うのよ。」
中川は、繭子の返答に、少し胸を撫で下ろし、言葉を返した。
「うん・・・、まぁね・・・。」
「へぇ・・・?そうなんだ。私には、してくれ無かったじゃん。そんな事・・・。」
そう言うと、繭子は、その黒いガムテープを手にしたまま、中川の胸に頭を埋めた―\r
「あ、シャンパンでも飲む?繭子、好きでしょ?シャンパン。」
中川は、空気をガラリと変えようと、繭子にそう言った。
「シャンパン?良いわね・・・。飲む、飲む・・・。秀樹?後で、私にもして。このガムテープで、縛って・・・?」
「・・・、冗談だろ?繭子、そう言うの、嫌いだと思ってたけど。」
「嫌いだなんて、言った事無いわよ?私、結構、Mじゃん?って言われるもん。」
「解った、解った。冷蔵庫とセラーが、下に有るんだ。取って来る、シャンパン・・・。」
「うん・・・。待ってる。」
中川は、女性から圧されるのが嫌いだった。自分が、優位に立ちたかったのだ―\r
繭子の事を、鬱陶しい存在にも思えて来て居た。
しかし、今更、もう、繭子を帰す事は出来そうに無かった―\r
一階に降りて、冷蔵庫の扉を開けた時、中川の脳裏にフッと余切る物が有った―\r
「このシャンパンの中に、睡眠薬を入れてしまおう・・・。」
元々、私を眠らせる時に遣った物も、父親が、たまに服用していた物だった。
中川は、冷蔵庫の前に有る、キッチンの戸棚を、蜊り始めた。
出て来たのだった―\r
睡眠薬。
「秀樹・・・?まだ〜?」
二階の廊下辺りから、陽気な繭子の声が響いた。
「えっ?うん・・・、もう上がるから、少し待ってて。」
中川は、小さな半透明な薬袋をポケットに忍ばせ、シャンパンとグラスを二つ、お盆に乗せて、二階への階段を急ぎ足で掛け上がった―