『ねぇ‥お母さん。』
『なぁに?桃子?』
『私ね、彼に会いに行く時、人の優しさを見たの。』
『まぁ?どんな?』
『杖をついて歩いているお婆さんに、
優しく手を差し伸べている若者がいたんだ。』
『まぁ。素敵なお話ね。』
『その時私思ったの。
あぁ、この世もまだまだ捨てたもんじゃないって。』
『そうね。』
『お母さん‥私、
生きて行く勇気が湧いて来た。』
『そう。よかった。
お母さんは、桃子の笑顔が増えた事が一番嬉しい。』
彼に会いに行く時に見た、
人の優しさ――
あぁ、この世も捨てたもんじゃないって思った。
それは、
小さな頃、
心無い人の中傷の言葉、
好奇の目に傷つき、
悩んだり、
泣いたりしていた自分が、
見落としていたモノ――
私自身、
今まで全く気づいていなかったモノ――
けれど、
やっと今、
分かりました。
親切な人だって、
たくさんいるんだって事――
それを教えてくれたあなた、
そして、
神さまありがとう。
たった一日だったけれど、
私の夢を叶えてくださったのは、
今思うと、
それに気づかせてくれるためだったのかなって思う。
『ねぇ‥お母さん‥‥‥。』
『なぁに?』
『私を産んでくれてありがとう‥‥。』
『桃子っっ‥‥。』
窓の外は雪。
思わず窓を開けて空を見上げた。
あなたを乗せた飛行機は、
もう飛び立ったのかな。
宇野崎さん。
あなたと過ごした素敵な夜を、
私は一生忘れません。
私の体の細胞のひとつひとつが、
あなたの温もりを覚えているから。
生きてく強さと生きる希望を胸に抱き、
私はこれから歩いて行きます――
☆END☆
†この物語を、原作者である桃子さんへ捧げます†