翌、日曜日。練習ではノースローで肩を休めた隼人。正太の家でさらに試験勉強に励む。
「また今度の日曜ウチ来いよ。それまで自分で空いた時間にやっとけよ。俺は高校日本史の方を調べとくから。」
月曜日。本来ならこの日100球以上投げ、試験休みに入る予定だったが、隼人は仁藤に変更を申し出る。
「なんか勉強のストレスを練習で発散したくて…」
仁藤の承諾を得て80球。
中1日ずつ空け、
水曜日100球
金曜日120球
授業の合間を縫っての勉強で、問題集の正解率があがっていくのに合わせるように投球練習の球数も増えていく。
そして日曜日。試験前、最後の練習で140球の熱投。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
アンダーシャツ1枚になった隼人の体中から湯気が立ちのぼる。
「お前の球ずっと受けてたらミットの紐がちぎれちまったぜ。」
キャッチャーミットの傷んだ箇所をなぞりながら仁藤は苦笑いする。
「よし!あとはテストで点取るだけだな!」
ミットに力強く握り拳を突っ込んだ仁藤の表情が真剣な面持ちに変わると、隼人は目を輝かせながら無言で頷いた。
その夜、隼人は正太の家で最後の勉強に取り掛かる。
「あともう一息だぞ!隼人。」
「まずはこれ行くか。
氷期と間氷期を繰り返した更新世を経て完新世が始まるころ、日本は縄文時代に入った。縄文時代は六期に区分されるが、一期目を○○期という。」
「まさか一学期とかじゃねーよなぁ。」
入学当初、授業中に居眠りしていた隼人は悩む…
それを見かねた正太が説明をする。
「正解は草創期。お前が今野球部に入って自分達のチームを作っていってる段階と似たようなもんだ。」
「草創期か、これから俺も仲間とチーム作り上げてくんだよな。」
隼人は正太に教わった正答と尾張ヶ丘野球部を重ね合わせる。
その後、真夜中まで勉強を続けた二人。
「やるだけのことはやった。自信もって行けよ!!」
隼人の帰り際、マンションの軒先まで見送りに来た正太が隼人の左肩に手を乗せ激励する。
「テストの結果出たらすぐ教えてくれよな。。」
「ああ、すぐ知らせる。じゃあなっ。」
隼人は正太と拳を軽く突き合わすと家路についた。
数時間後、いよいよ試験当日の朝を迎えた。