時間と共に
その足に重くのしかかっていた。
恐怖と。
責任。
冷たい風が頬を通りすぎ、
黒い無数の葉と、枝が
まるで人の形の様に不気味に映る。
それは、幻覚なのか
遠く闇の方から話し声が聞こえてきた。
「おまえをころしてやる」
「そのからだをくってやる」
たまらずその足は止まってしまった。
「どうした?」
リュートは青い顔をしたオヨに言った。
「さっきから、声が聞こえる。俺たちを見ているんだ」
ただ事ではない様子に、リュートとサヤは互いの顔を見合った。
森は静寂に包まれながらも、時折どこからか風が吹き、葉が擦れ合って不気味な音が森に鳴り響く。
こんな所に1分も立ち止まっていたくはないのだ。
「見られてるって誰に?」リュートはオヨの肩に手を置き、その顔を覗きながら質問した。
「サンケ族だよ。もう縄張りに入ってるんだ。」
「まだ森に入って30分も経ってないぞ。境界線までは行ってない、気のせいだ。」
「気のせい?じゃあ、あれは?」
オヨの指差す方へ、リュートは顔を向けた。
その瞬間、闇に包まれていたはずの森が、一瞬にして辺り一面に光が満ちた。
そのまぶしさに直視できず、指のすき間からリュートは見たのだ。
「サンケ族…」
それは紛れもなく人の姿だった。