翔は、もう、何もかもが終わって欲しいと願っていた。
祖父が生きていた時は、祖父と叔母の房子がペアになり、それなりに、家族が五人揃って自分に好意的な大切な存在だった。
叔母の自分に対する過干渉も、今よりはマシだった。
一人っ子の翔にとって、家族はかけがえのない存在だったのが、祖父の死後、形がいびつになった。
祖父という、バリアがなくなり、叔母も祖母も過剰に自分に向かってきた。
自分に対して、良くされているわけで、別に翔は、その好意が嫌ではなかった。
在宅していたら、動く必要などない。
物も、食品も、向こうから来る。母親に、せき立てられるように学校に行ったが、もう、だらしなさが身に付き出していた。
母親の結衣子の苛立ちは、理解したくなかった。
そうこうする内に、国立大に合格出来ると、友人のように一人暮らしをしてみたくなった。
母は、いそいそと下宿の手配をした。不便な土地だったが、車も買ってくれた。
それはそれで快適でありながら、自分が家にいない事を、母親が奨励することは面白くなかった。